有川浩「空飛ぶ広報室」をいまさらながら読んだ
こんにちは、お久しぶりですまきのすけです。
今日は数年前にドラマ化するなど結構話題になった「空飛ぶ広報室」が去年の四月に文庫本化され、いまさらながら読んだので感想などもろもろ書いていきたいと思います。
あらすじ
この物語の主人公である元パイロットの空井大祐二尉は幼いころからの夢であったブルーインパルスに乗るため戦闘機パイロットとして努力していたがその一歩手前で交通事故に巻き込まれてしまいます。そこで負ってしまった怪我が原因でパイロットの資格を失ってしまい市ヶ谷の航空幕僚幹部広報室へと配属され、今までパイロットとして外部との接触がほとんどなかった空井が世間の風当たりや認知度の低さを帝都テレビ自衛隊担当に回されたばかりの稲葉リカを通じ初めて感じ今までの戦闘機での経験を活かしつつ自衛隊への理解を深めてもらえるよう同じ広報室の隊員や稲葉リカを通じて奔走する…という物語です
著者の取材によって物語の面白さがプラスされている
僕がこの本を読んでいてとても感じたのが現場に対してしっかり取材に行って現場の様子をよく反映してるなということでした。
実際広報室内でテレビに自衛隊の装備品を提供したりpv撮影に装備品を提供する際に企画の趣旨などを確認し適正かどうか確認する会議の場面などが出てくるのですが、この適正かどうかという判断は自衛隊に対して嫌悪感を持っている人たちに対して上げ足を取らせないようにものすごく考えられていて民間で働いてる人では気にしないようなことばかりなので、なるほどこういう考え方もできるのか、こういったところまで気を使わなければいけないのかといちいち感心させられます。
現実的でかつ読み手の意表を突くような視点で書かれていることが作者の取材のたまものなのではないかと思います。
明るくて凄腕の室長と固い帝都テレビの稲葉リカ
この物語で空井の次に大事になって来る登場人物は広報室長の鷲坂室長、自衛隊に対していいイメージを持たない帝都テレビ自衛隊担当の稲葉リカです。
空井室長はミーハーな親父のような感じでデビューした芸能人などの情報にとても詳しいです。また、優しい人柄と自分の部下の小さな心の変化にも気づいて助言を与える面倒見の良い室長です
稲葉リカは高校時代の教師の意見を何一つ疑わずうのみにして自衛隊に対していい印象を抱いていない帝都テレビのディレクターです。空井は配属され最初に鷲坂と稲葉との会議に同席させられ自衛隊への風当たりの厳しさと世間の装備品に対する興味の薄さに衝撃を受けます。さらに稲葉が持ち込んだ情報番組の企画の補佐に空井が回され稲葉が広報室に来た時など空井が対応することになりますが空井は
稲葉に自衛隊を正しく理解してもらうことを目標にします。その後もこの二人の距離感などが物語の大切な要素となってくるので読まれる方は意識して読んでみてください。
今あげた二人以外にも広報室やテレビ局の登場人物はたくさんいます。ほかの人物も細かい設定やそれぞれの広報への想いなどもさまざまですので読んで楽しんでみてください。
追加された「あの日の松島」
この本の最後の章に「あの日の松島」というのがあります。これは東日本大震災の時の松島基地について書かれているもので著者が本の発売期間を後らしてでも挿入した物語です。この物語で稲葉が自衛官にインタビューする場面があるのですが、これは著者が実際に取材したときの自衛官の様子を人物を置き換え書いており、とても心に刺さるものがあります。
また震災時の自衛隊の報道では自衛隊への感謝のような報道が多かったですが「自衛隊が冷たい缶メシを食べていることをクローズアップするのではなくて自衛隊がいたら被災者が温かい食事を食べられるということをクローズアップしてほしい。」という言葉が特に印象に残っています。
ニュース番組では見られなかった一面がみられ6年前の出来事を今一度整理して考える機会にもなりました。
総評
この本を読んで私たちが普段何気なく目にする自衛官募集の㎝一つにしても細かいところまで考慮してつくられていることに初めて気づかされました。
このような自衛隊の裏側を知ることができる機会はほとんどないと思います。自衛隊に興味がある方はもちろん興味のない方でも人間ドラマを通じて自然と自衛隊に対する理解や知識が深まると思うので是非一度読んでみてはいかがでしょうか。
日々我々の安全を守ってくれている自衛隊について考えるきっかけになるかもしれません。
ここまで読んでいただきありがとうございました。